歯列矯正中の患者さんから最も多く寄せられるお悩みの一つが、口内炎です。矯正装置がお口の粘膜に当たってしまい、痛みや不快感を引き起こすことは少なくありません。私たち歯科衛生士は、そんな患者さんの辛さを少しでも和らげ、治療をスムーズに進められるよう、日々様々なアドバイスをさせていただいています。まず、矯正装置を装着したばかりの頃や、ワイヤー調整後は特に口内炎ができやすい時期です。これは、お口の粘膜がまだ装置の形に慣れていないため、どうしても擦れてしまうからです。そんな時に活躍するのが「矯正用ワックス」です。このワックスを米粒くらいの大きさにちぎって丸め、痛みを感じるブラケットやワイヤーの端にしっかりと押し付けて覆うことで、粘膜への直接的な刺激を和らげることができます。ワックスは食事の際には外れることもありますが、何度でも付け直して大丈夫です。外出時にも携帯しておくと安心ですね。それでも口内炎ができてしまった場合は、市販の口内炎治療薬を使用するのも一つの方法です。軟膏タイプやパッチタイプなど様々な種類がありますが、薬剤師さんにご自身の状況を相談して選ぶと良いでしょう。歯科医院でも、症状に応じて塗り薬を処方したり、痛みを和らげるためのレーザー治療を行ったりすることもありますので、我慢せずにご相談ください。また、日々の口腔ケアも非常に重要です。お口の中が不潔になっていると、小さな傷から細菌が感染し、口内炎が悪化しやすくなります。矯正装置の周りは特に汚れが残りやすいので、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやタフトブラシ(毛先が一つにまとまった小さなブラシ)を使って、丁寧に磨くことを心がけてください。そして、食事にも少し工夫を。口内炎ができている時は、熱いもの、辛いもの、酸っぱいものなど、刺激の強い食べ物は避けましょう。醤油やソースがしみることもありますので、薄味の、柔らかくて食べやすいものを選ぶと良いでしょう。栄養バランスの取れた食事と十分な睡眠は、体の抵抗力を高め、口内炎の治りを早める助けにもなります。歯列矯正は、美しい歯並びと健康な噛み合わせを手に入れるための大切な治療です。その過程で口内炎に悩まされることもあるかもしれませんが、適切な対処法を知り、私たち専門家と協力しながら乗り越えていきましょう。どんな小さなことでも、不安な点があれば遠慮なくお声がけください。
歯科衛生士が伝授!矯正中の口内炎との上手な付き合い方