二年半もの長い期間、苦楽を共にしてきた矯正装置。ついに、そのブラケットが外れる日がやってきました。歯の表面には何もなく、舌でなぞればツルツルとした感触が広がる。この解放感を、どれだけ待ちわびたことでしょう。しかし、多くの人が、この感動の直後に、予期せぬ「新たな違和感」に直面することになります。歯列矯正の旅は、ブラケットオフで終わりではなかったのです。まず訪れるのが、「自分の歯じゃないみたい」という感覚。これまでブラケットの厚みに慣れていた唇や舌が、薄くなった歯の表面に戸惑い、ツルツルすぎてなんだか落ち着かない、という不思議な感覚に陥ります。また、歯が全体的に浮いているような、あるいは頼りなくグラグラしているような、不安な感覚を覚える人もいます。これは、歯を支える骨がまだ完全に固まっていないために起こる現象です。そして、食事の際には「どこで噛めばいいか分からない」という、噛み合わせの違和感に悩まされます。歯が全く新しい位置で噛み合うようになったため、脳がその位置を認識できず、効率的な咀嚼ができないのです。これも、数週間から数ヶ月かけて、脳と筋肉が新しい噛み合わせに慣れていくことで解消されます。しかし、最大の違和感は、おそらく新たなる相棒、「保定装置(リテーナー)」の存在でしょう。せっかく口の中から異物がなくなったと思ったのに、また新たな装置を入れなければならない。特に、自分で取り外しができるプレートタイプのリテーナーは、装着時の異物感や、しゃべりにくさを再びもたらします。このリテーナー生活を面倒に感じ、サボってしまう人もいますが、それは絶対にNGです。歯は、何もしなければ元の位置に戻ろうとします(後戻り)。このリテーナーこそが、長い治療の成果を守り、美しい歯並びを一生ものにするための、最後の、そして最も重要な関門なのです。ブラケットオフ後の違和感は、歯が新しい環境で安定するための最終調整期間のサイン。本当のゴールを目指し、もうひと頑張りしましょう。
ゴールじゃないの?装置が外れた後に訪れる新たな違和感