歯列矯正は、一般的に1年半から3年程度の長い期間を要する治療ですが、中には驚くほどスムーズに進み、予定よりも早く治療を終える人がいます。その差は一体どこから生まれるのでしょうか。「早く終わる人」には、実はいくつかの共通した特徴と、生物学的な背景が存在します。まず、最も大きな要因として挙げられるのが「歯の動きやすさ」です。これは、専門的には「骨代謝の活発さ」と言い換えられます。歯列矯正は、歯に力をかけることで、歯の周りの骨が溶けて(骨吸収)、新しく作られる(骨添加)というリモデリング現象を利用して歯を動かします。この骨代謝のスピードは個人差が非常に大きく、代謝が活発な人ほど、歯はスムーズに動きます。一般的に、若年者の方が高齢者よりも骨代謝が活発であるため、子どもの矯正や、10代〜20代の若い世代の方が、治療期間が短くなる傾向にあります。次に、「歯並びの初期状態」も大きく影響します。当然ながら、歯の移動距離が少なくて済む、比較的軽度な不正咬合(少しのがたつきなど)は、抜歯が必要となるような重度の不正咬合に比べて、治療期間は短くなります。歯を動かす量が少なければ、それだけ早くゴールにたどり着けるのは自明の理です。また、「顎の骨の柔らかさ」も関係すると言われています。骨密度が低く、比較的柔らかい骨の方が、歯が移動しやすいと考えられています。これは遺伝的な要素も関わってくるため、自分ではコントロールできない部分です。さらに、忘れてはならないのが、患者さん自身の「協力度」です。これは、自分でコントロールできる唯一かつ最大の要因と言えるでしょう。決められた通院スケジュールをきちんと守る、マウスピース矯正の場合は装着時間を徹底する、ゴムかけ(顎間ゴム)の指示に真面目に取り組む、といった日々の協力が、治療計画を遅滞なく進める上で不可欠です。これらの生物学的な要因と、患者さん自身の努力。その両方がうまく噛み合った時、歯列矯正は最も効率的に進み、「早く終わる」という理想的な結果に繋がるのです。
歯列矯正が早く終わる人の特徴とメカニズム