歯列矯正における違和感の中でも、日々の生活に最も直接的な影響を与えるのが「食事」に関するものです。これまで当たり前のように楽しんでいた食事が、突如として困難なミッションに変わってしまう。その違和感は、主に「噛む時の痛み」と「装置に挟まる不快感」という二つの側面から成り立っています。まず、装置をつけたてや調整直後の数日間に訪れる「噛む時の痛み」。これは歯が動いている証拠であり、避けては通れない道です。この期間は、無理して普段通りの食事を摂ろうとせず、割り切って「噛まなくて良い食事」に切り替えましょう。おかゆ、雑炊、ポタージュスープ、茶碗蒸し、豆腐、ヨーグルト、ゼリー飲料などが、矯正中の強い味方です。痛みが和らいできたら、徐々に通常の食事に戻していきますが、ここから「挟まる不快感」との戦いが始まります。特に、繊維質の多い野菜(ほうれん草、えのき、ニラなど)、ひき肉、そしてパン類は、ブラケットとワイヤーの間に驚くほど巧妙に挟まり、食後のストレスの原因となります。外食などでメニューを選ぶ際は、こうした食材を避け、比較的挟まりにくい塊肉や、ペンネのようなショートパスタ、リゾットなどを選ぶと良いでしょう。調理の工夫も非常に有効です。食材はできるだけ小さくカットし、野菜は柔らかく煮込む。それだけでも、食べやすさと挟まりにくさは格段に向上します。そして、何よりも大切なのが、食後のケアを徹底すること。外出時には必ず「歯ブラシ・タフトブラシ・手鏡」の三点セットを携帯し、食後すぐに化粧室でチェックする習慣をつけましょう。食べカスが挟まったまま人と話すのは、想像以上に恥ずかしいものです。食事の違和感は、確かにストレスです。しかし、食べ物を選び、調理を工夫し、ケアを徹底するという一連のプロセスは、まるで難しいパズルを解くようなもの。楽しみながら攻略法を見つけていくことで、長い矯正期間を乗り切るためのサバイバル能力が身についていくはずです。
矯正中の食事はまるでパズル?食べ物の違和感を克服するコツ