マウスピース矯正の大きなメリットとして「食事の時は取り外せる」「会話の時も目立たない」という点がよく挙げられます。確かに、従来のワイヤー矯正と比較すると、これらの点は大きな魅力に感じるでしょう。しかし、実際の日常生活においては、いくつかのデメリットや不便さを感じる場面も少なくありません。まず食事についてですが、マウスピースを装着したまま食事をすることは基本的にできません。マウスピースが破損したり、変形したりする原因になるだけでなく、食べ物がマウスピースと歯の間に挟まり、虫歯や歯周病のリスクを高めてしまうからです。そのため、食事の度にマウスピースを取り外す必要があります。そして、食事が終わったら、必ず歯を磨いてからマウスピースを再装着しなければなりません。これが意外と手間なのです。外出先でのランチや、友人との会食の際など、すぐに歯磨きができる環境が整っていない場合、どうすればよいか悩むこともあるでしょう。食後すぐに歯磨きができない場合は、せめて水でよく口をすすいでからマウスピースを装着し、帰宅後に改めて丁寧に歯磨きとマウスピースの洗浄を行うといった対応が必要になります。次に会話についてですが、確かに透明なマウスピースはワイヤー矯正に比べて格段に目立ちにくいです。しかし、装着し始めの頃や、新しいマウスピースに交換した直後などは、多少の違和感があり、滑舌が悪くなったり、話しにくさを感じたりすることがあります。特にサ行やタ行などが発音しづらいと感じる方が多いようです。これは時間とともに慣れていくことがほとんどですが、接客業や講師など、人前で話す機会が多い方にとっては、一時的にストレスを感じるかもしれません。また、マウスピースを装着していると、唾液が溜まりやすく感じたり、逆に口の中が乾燥しやすく感じたりすることもあります。これらの感覚も、慣れによって軽減されることが多いですが、不快感が続く場合は我慢せずに歯科医師に相談しましょう。このように、マウスピース矯正の日常生活は、イメージされるほど常に快適というわけではありません。取り外せる自由がある一方で、それに伴う自己管理の手間や、細かな不便さが伴うことを理解しておくことが、治療をスムーズに進める上で大切です。