歯列矯正治療中や治療後に、頬のボリュームが減って頬骨が目立つようになったと感じる方がいます。この変化は一時的なものなのか、それとも元に戻らないのか、そして何かできるアフターケアはあるのか、気になる方も多いでしょう。まず、矯正治療中に頬がこけて見える主な原因の一つは、食事の変化やストレスによる一時的な体重減少、あるいは咀嚼筋(物を噛むための筋肉)の活動量の低下です。矯正装置に慣れるまでは食事がしにくかったり、硬いものを避けたりすることで、顔周りの筋肉があまり使われなくなり、筋肉が少し痩せてしまうことがあります。このような筋肉の萎縮や脂肪の減少による頬こけは、矯正治療が終了し、通常の食事ができるようになり、しっかりと噛む習慣が戻れば、ある程度回復することが期待できます。筋肉は使えば再び発達しますし、体重も元に戻れば頬のボリュームも回復する可能性があります。しかし、抜歯を伴う矯正治療によって口元が大きく後退し、その結果として頬骨が相対的に目立つようになった場合は、この骨格的なバランスの変化は基本的に元に戻るものではありません。これは、治療計画に基づいた意図的な変化であり、むしろ良い結果と捉えられることが多いです。アフターケアとして大切なのは、まず、リテーナー(保定装置)を指示通りにしっかりと使用し、後戻りを防ぐことです。せっかく整った歯並びが元に戻ってしまうと、顔全体のバランスも崩れてしまう可能性があります。また、矯正治療後も、バランスの取れた食事を心がけ、しっかりとよく噛んで食べる習慣を維持することが重要です。これにより、咀嚼筋の活動を促し、健康的な頬のボリュームを保つことに繋がります。急激なダイエットなども、頬こけを助長する可能性があるので注意が必要です。もし、矯正治療後の頬骨の目立ち具合や頬のこけがどうしても気になる場合は、自己判断せずに、まずは担当の歯科医師に相談してみましょう。原因を特定し、必要であれば、表情筋のエクササイズやマッサージといったセルフケアのアドバイスを受けたり、場合によってはヒアルロン酸注入などの美容医療的なアプローチを検討したりすることも考えられます(ただし、これらは歯科治療の範囲外となります)。重要なのは、変化の原因を正しく理解し、適切な対処法を選択することです。