歯並びや噛み合わせの問題が原因でいびきをかいている場合、歯列矯正治療によってその改善が期待できます。では、具体的にどのような治療法があり、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。治療法や期間は、いびきの原因となっている不正咬合の種類や程度、そして患者さんの年齢などによって大きく異なります。まず、いびきの大きな原因の一つである「下顎の後退や小ささ」が問題である場合です。成長期のお子さんであれば、下顎の成長を前方へ促すような機能的矯正装置(例えば、バイオネーターやツインブロックなど)を用いたり、上顎の成長をコントロールしたりする治療(咬合育成)が行われます。これにより、気道が広がり、いびきの改善が期待できます。治療期間は、顎の成長の度合いにもよりますが、1年から数年程度かかることが多いです。成人の場合で、下顎の後退が著しい場合は、外科手術を伴う矯正治療(顎変形症治療)が必要となることもあります。この場合は、手術前後に歯列矯正を行い、トータルで2年から3年程度の治療期間が見込まれます。次に、「歯列のアーチが狭く、舌のスペースが不足している」場合です。この場合は、歯列のアーチを側方に拡大するような矯正装置(例えば、急速拡大装置やクワドヘリックスなど)を使用したり、ワイヤー矯正やマウスピース矯正で歯を徐々に外側に移動させたりする治療が行われます。舌房(舌が収まる空間)が広がることで、舌根沈下が起こりにくくなり、いびきの改善に繋がります。治療期間は、拡大の程度にもよりますが、半年から2年程度が目安となるでしょう。また、「口呼吸を誘発するような歯並び(出っ歯や開咬など)」が原因である場合は、通常のワイヤー矯正やマウスピース矯正によって、歯並びを整え、口唇が自然に閉じやすい状態を目指します。鼻呼吸が促されることで、口腔内の乾燥が防がれ、いびきが軽減されることが期待できます。治療期間は、不正咬合の程度によりますが、1年から3年程度が一般的です。これらの歯列矯正治療と並行して、あるいは治療後に、睡眠時に装着するスリープスプリント(口腔内装置)が用いられることもあります。これは、下顎をわずかに前方に固定することで気道を確保する装置で、いびきや軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群に対して効果的です。