歯科矯正用アンカースクリューは、現代の矯正治療に多くの恩恵をもたらしましたが、他の医療行為と同様に、メリットだけでなくデメリットやリスクも存在します。治療を選択する前に、両方の側面を正しく理解しておくことが、後悔のない結果に繋がります。まず【メリット】から見ていきましょう。最大のメリットは、何と言っても「治療の精度と効率の向上」です。動かない強固な固定源が得られるため、計画通りに歯を動かすことができ、治療結果の予測性が高まります。また、望まない歯の動き(副作用)を最小限に抑えられるため、トータルの治療期間が短縮される傾向にあります。二つ目の大きなメリットは、「治療の適応範囲の拡大」です。前述の通り、スクリューを用いることで、非抜歯矯正の可能性が広がりました。また、ガミースマイルの改善や、開咬(オープンバイト)の治療など、以前は外科手術でしか対応できなかったような難症例も、矯正治療単独でアプローチできるケースが増えています。一方で、【デメリットとリスク】も存在します。まず、スクリューが骨に定着せず、グラグラになって「脱落」してしまうリスクがあります。これは、骨が柔らかい場合や、スクリューに過度な力がかかった場合、あるいは周囲の衛生状態が悪い場合に起こりやすくなります。脱落した場合は、位置を変えて再埋入することになります。また、スクリュー埋入部の周囲の清掃を怠ると、歯茎が炎症を起こす「スクリュー周囲炎」になる可能性があります。これを防ぐためには、タフトブラシなどを使って、スクリューの周りを丁寧に磨く習慣が不可欠です。ごく稀なリスクとして、埋入時に歯の根(歯根)を傷つけてしまう可能性や、神経を損傷する可能性もゼロではありませんが、これらはレントゲンなどで位置を十分に確認しながら行うことで、ほとんどの場合回避できます。これらのメリットとデメリットを天秤にかけ、ご自身の症例においてスクリューを使用する価値がどれだけあるのかを、担当医と十分に話し合って判断することが大切です。
矯正用スクリューのメリットデメリットを徹底解説