マウスピース矯正は、患者さん自身でマウスピースの交換や管理を行うため、治療中に何らかのトラブルが発生した場合、迅速な対応が難しいというデメリットがあります。従来のワイヤー矯正であれば、装置に不具合が生じた場合、すぐに歯科医院を受診すれば歯科医師や歯科衛生士が直接対応してくれます。しかし、マウスピース矯正の場合、特に遠方の歯科医院に通院している場合や、海外出張中など、すぐに専門家のアドバイスを受けられない状況も考えられます。例えば、最も起こりやすいトラブルの一つが「マウスピースの紛失・破損」です。食事の際に外したマウスピースをティッシュにくるんで置いておき、誤って捨ててしまったり、不注意で踏んで割ってしまったりすることは珍しくありません。このような場合、次のマウスピースに進むべきか、一つ前のマウスピースに戻るべきか、あるいは新しいマウスピースを再製作する必要があるのか、自己判断は禁物です。速やかに歯科医院に連絡し、指示を仰ぐ必要がありますが、連絡が取れるまで治療が中断してしまう可能性があります。また、アタッチメントが外れてしまうというトラブルも起こり得ます。アタッチメントは歯を動かす上で重要な役割を果たしているため、外れたまま放置すると治療計画に影響が出ることがあります。これも、すぐに歯科医院に連絡して対応してもらう必要がありますが、予約がすぐに取れない場合など、対応が遅れることも考えられます。さらに、旅行中や出張中に、次のステップのマウスピースを持ってくるのを忘れてしまったり、予定よりも早く現在のマウスピースの交換時期が来てしまったりするケースも想定されます。このような場合も、自己判断で治療を進めることはできず、歯科医師の指示を待つしかありません。これらのトラブルは、治療期間の延長や、追加費用の発生に繋がる可能性があります。マウスピース矯正を選択する際には、このような緊急時の連絡体制や対応について、事前に歯科医院とよく確認しておくことが重要です。また、マウスピースの取り扱いには細心の注意を払い、紛失や破損を防ぐ努力を怠らないこと、そして万が一トラブルが発生した際には、速やかに歯科医師に相談するという意識を持つことが、スムーズな治療進行のためには不可欠です。
トラブル発生!マウスピース矯正中の緊急時対応の難しさ