歯列矯正治療中の痛みは、ある程度予測されるものであり、多くは数日から1週間程度で落ち着きます。しかし、その痛みがいつまでも続いたり、日常生活に支障をきたすほど強かったりする場合は、単なる「歯が動く痛み」ではない可能性も考えられます。そのような時には、我慢せずに速やかに担当の歯科医師に相談することが重要です。では、具体的にどのような場合に歯科医師に相談すべきなのでしょうか。まず、「痛みが1週間以上経っても全く軽減しない、あるいはむしろ悪化している場合」です。通常の歯の移動に伴う痛みであれば、ピークを過ぎると徐々に和らいでいくはずです。それが長期間続く、または日に日に強くなるというのは、何らかの異常が起きているサインかもしれません。次に、「処方された鎮痛剤を服用しても、痛みがほとんどコントロールできない場合」です。一般的な矯正治療の痛みであれば、鎮痛剤である程度は抑えられることが多いです。それが全く効かないほどの強い痛みは、注意が必要です。また、「特定の歯だけが異常に痛む、ズキズキとした拍動性の痛みがある、歯肉が赤く腫れて膿が出ているといった症状がある場合」も、すぐに歯科医師の診察を受けるべきです。これらは、虫歯が神経まで達していたり、歯の根の先に炎症が起きていたり、重度の歯周病が進行していたりする可能性を示唆しています。さらに、「矯正装置が明らかに粘膜に食い込んでいたり、ワイヤーが頬や舌に刺さって出血が止まらなかったりする場合」も、我慢せずに連絡しましょう。装置の調整や修理が必要な場合があります。そして、「頭痛や顎の痛み、肩こりなどがひどく、日常生活に支障が出ている場合」も相談の対象です。噛み合わせの変化が、顎関節や周囲の筋肉に過度な負担をかけている可能性があります。これらの症状に加えて、発熱や体調不良などを伴う場合も、速やかな受診が必要です。「矯正治療だから痛いのは仕方ない」「これくらいで騒ぐのは大袈裟かもしれない」などと遠慮してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、歯科医師は患者さんの状態を正確に把握し、適切な対処をするのが仕事です。不安なことや異常を感じたら、些細なことでも遠慮なく相談する勇気が、結果的に治療をスムーズに進め、より良い結果に繋がるのです。
それでも痛みが続くなら…歯科医に相談すべきタイミング