長引く頭痛は本当につらいものです。日常生活に支障をきたし、気分も落ち込みがちになります。その原因がわからず、様々な治療を試しても改善しない場合、もしかしたら歯並びや噛み合わせの問題が隠れているのではないか、そして歯列矯正で治るのではないか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。実際に、不正咬合が原因で起こる緊張型頭痛や顎関節症に伴う頭痛が、歯列矯正治療によって改善するケースは存在します。しかし、ここで最も重要なのは、自己判断をせず、まずは専門家へ相談するということです。頭痛の原因は非常に多岐にわたります。筋肉の緊張、血管の拡張や炎症、神経の圧迫、さらには脳腫瘍や脳卒中といった深刻な病気が潜んでいる可能性もゼロではありません。そのため、頭痛でお悩みの場合、最初に行うべきは、神経内科医や頭痛専門医といった、頭痛の診断と治療を専門とする医師の診察を受けることです。そこで詳細な問診や検査を受け、頭痛の種類や原因を特定してもらう必要があります。その結果、頭痛の原因が歯科的な問題、例えば重度の不正咬合や顎関節症などに関連していると診断された場合、あるいは他の専門医から歯科受診を勧められた場合に、初めて歯列矯正が治療の選択肢の一つとして具体的に検討されるべきです。歯科医師は、口腔内の状態、歯並び、噛み合わせ、顎関節の状態などを詳細に検査し、歯列矯正治療によって頭痛の改善が期待できるかどうかを判断します。また、歯列矯正治療を開始する前に、顎関節症の治療(スプリント療法など)を先行させる必要がある場合もあります。大切なのは、それぞれの専門家が連携を取り合い、患者さんにとって最適な治療法を見つけ出すことです。歯科医師は口腔の専門家であり、頭痛専門医は頭痛の専門家です。それぞれの知見を持ち寄ることで、より的確な診断と効果的な治療に繋がるのです。「歯列矯正をすれば頭痛が治るかもしれない」という期待を持つことは自然なことですが、それはあくまで可能性の一つに過ぎません。まずは適切な医療機関を受診し、専門家の意見に耳を傾けることが、長年の悩みである頭痛から解放されるための最も確実な第一歩となるでしょう。
頭痛と歯列矯正専門家への相談が解決の第一歩